【夏がくる合図】
沖縄では旧暦の2月から3月の時季を「うりづん」(※1)と呼びます。
大地が潤い始める時季です。
新暦でいうと2月下旬あたりから4月下旬頃でしょうか。今年の暦では4~6月頃になります。
うりづんの時季にはいると吹く風の気配が変わりはじめます。
少しずつ南から風が吹き始め、ブルッと震えていた冬の風とは違う感触になり、
風をあたたかく感じる日が増えてくるのです。
南からの風を感じ始めるころ、やんばるの山々に色の変化がおこりはじめます。
一年中緑色だけの亜熱帯地域の山かと思いきや、緑色の表情が若々しくなるのです。
若葉の青々とした芽の緑におおわれていくのです。しばらくたつと、イジュ(※2)の花が咲き始めます。
山々の緑の中に、イジュの白い花がぽつぽつと現れ、満開の頃は点描で描かれた白い帯のようです。
花の白い色が緑の山々に加えられていく景色は
「すぐそこまで 夏が きているよ」と
合図を送っているかの様、亜熱帯地域のささやかな季節の変わり目の風景です。
※1うりづん:旧暦2,3月のころをいうことば。大地が潤い、麦の穂の出る時節。このころに吹く南風を〈ウリズンベー(うりづ ん南風)〉という。
※2イジュ :ツバキ科。山地の非石灰岩地域にみられる。高さ20mにもなる。5~6月ごろ、白い花が目につく。花の大きさは直径約4cm、枝先にまとまって咲く。国頭の花木。琉球列島の固有亜種。
参考/『沖縄大百科事典』(出版社:沖縄タイムス社)
/『やんばるいきもの図鑑』(編集発行:やんばる自然体験活動協議会)